私たちの印象を大きく左右する、髪や肌の健康。ツヤのある髪やなめらかな肌は、多くの人が憧れる「美しさ」の象徴です。
そんな美容に関わる栄養素として知られるのがビオチン。でも実は、ビオチンは見た目だけでなく、体の中でも重要な役割を果たしているんです。
この記事では、ビオチンの本当のはたらきや不足するとどうなるのか、どんな食べ物から摂れるのかなどをわかりやすく解説します。
目次
ビオチンってどんな栄養素?
ビオチンはビタミンB群のひとつで、日本では「ビタミンB7」とも呼ばれます。フランスでは「B8」、昔は「ビタミンH(肌のビタミン)」と呼ばれていたこともあります。
髪や肌の健康に関わるイメージが強いビオチンですが、実はそれだけではありません。代謝や脳の働き、神経の健康にも深く関わっていて、全身にとって大切な栄養素です。
たとえば、脂肪酸やアミノ酸を分解してエネルギーに変えるサポートをしたり、細胞膜やホルモンの材料になる脂質の合成に関わったりしています。さらに、脳内の神経伝達物質の合成や、DNAの調整にも関わるなど、ビオチンが担う役割は多岐にわたります。
髪に良いって本当?
よく「ビオチンを摂ると髪が伸びる」「抜け毛に効く」といった話を聞きますが、科学的に断言できるわけではありません。
ただし、ビオチン不足のサインとして髪のトラブルが現れることがあるのは事実。たとえば抜け毛や髪のパサつきなどは、ビオチン不足が原因で起こることがあります。
このため、ビオチン配合のシャンプーやサプリが人気なのです。
ヨーロッパの食品安全機関(EFSA)も、「ビオチンは健康な髪の維持に役立つ」と認めています。ただし、髪が早く伸びたり、枝毛が治ったりする直接的な効果については、今のところ科学的に明確な根拠はないとされています。
なぜ髪・肌・爪が「美の象徴」になるの?
「肌がきれい」「髪にツヤがある」といった見た目の特徴は、なぜ“美しい”とされるのでしょうか?
その理由のひとつは、進化心理学にあります。人は健康そうに見える人に魅力を感じる傾向があり、髪や肌の状態はその“健康のバロメーター”とされているのです。
つまり、私たちは自然と「見た目の美しさ=内面の健康」と感じるようにできているのかもしれません。
もちろん、美の基準はそれだけではありません。文化や流行、ライフスタイルなど、さまざまな要素が関係しています。
ビオチンが多く含まれる食品
ビオチンは水溶性のビタミンなので、体にためておくことができません。毎日の食事からしっかり摂ることが大切です。
以下のような食品に多く含まれています:
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加熱した卵(ゆで卵や目玉焼きなど)
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レバーや肝などの内臓類
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きのこ類(椎茸、舞茸、えのき、エリンギなど)
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ナッツや種子(ピーナッツ、くるみ、かぼちゃの種など)
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牛乳やチーズなどの乳製品
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大豆製品
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オートミールや玄米、全粒粉のパンやシリアル
🔍ポイント
卵は「加熱したもの」がベター。生卵に含まれる「アビジン」というタンパク質は、ビオチンの吸収を妨げてしまうためです。生卵ばかり食べていると、かえってビオチン不足になる可能性も。
1日のビオチン必要量は?
ドイツの栄養学会によると、大人は1日40マイクログラムのビオチンを摂るのが理想とされています。
授乳中の方は少し多めの45マイクログラムが目安です。
ビオチン不足になるとどうなる?
ビオチンが不足すると、まず髪や肌、爪といった再生の早い組織にサインが現れやすくなります。
たとえばこんな症状が起こることがあります:
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目や鼻、口まわりの赤みやかさつき
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抜け毛、髪のツヤ不足、爪がもろくなる
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目の炎症(角膜・結膜)
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粘膜のカビ感染
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免疫力の低下
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倦怠感、やる気が出ない
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吐き気、食欲不振など
こうした症状は他の不調とも重なるため、すぐに「ビオチン不足だ!」とは気づきにくいかもしれません。
サプリを摂っても大丈夫?
ビオチンは水に溶けるビタミンなので、摂りすぎた分は尿として体外に排出されます。
そのため、サプリメントで多めに摂っても大きな副作用はないとされています。
とはいえ、基本は「バランスの良い食事」で自然に摂るのが理想です。サプリはあくまで補助的に使いましょう。
ひと目でわかるポイント
- ✅ビオチンは髪や肌だけでなく、体全体の健康に関わる大切なビタミン。
- ✅不足すると、抜け毛や肌トラブル、爪の弱りなどが起こることも。
- ✅毎日の食事でしっかり摂ることが大事。加熱した卵やきのこ、ナッツ類がおすすめ!
参考文献
Deutsche Gesellschaft für Ernährung: Ausgewählte Fragen und Antworten zu Biotin.
https://www.dge.de/gesunde-ernaehrung/faq/biotin
F. Saleem & M.P. Soos: Biotin Deficiency. StatPearls[Internet] (2023)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK547751/
K. Aue: Biotin – das Haut- und Haarvitamin. DAZ (2008), Nr. 23
https://www.deutsche-apotheker-zeitung.de/daz-az/2008/daz-23-2008/biotin-das-haut-und-haar-vitamin
D.P. Patel et al.: A Review of the Use of Biotin for Hair Loss. Skin Appendage Disorders (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5582478/
T.M. Brasky et al.: Long-Term, Supplemental, One-Carbon Metabolism–Related Vitamin B Use in Relation to Lung Cancer Risk in the Vitamins and Lifestyle (VITAL) Cohort. Journal of Clinical Oncology (2017)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5648175/
Bundesinstitut für Arzneimittel und Medizinprodukte: Rote-Hand-Brief – Risiko falscher Ergebnisse von Laboruntersuchungen durch Biotininterferenzen (2019)
https://www.bfarm.de/SharedDocs/Risikoinformationen/Pharmakovigilanz/DE/RHB/2019/rhb-biotin.pdf?__blob=publicationFile