赤血球、神経、細胞の健康に欠かせない「銅」は、私たちの体にとって非常に重要な役割を担っています。
理科の授業で習ったあの銅が、実は体内でミネラルとして活躍していることをご存じでしょうか?
ここでは、銅の働きや必要量、食材、注意点などをわかりやすくまとめました。
1. 銅は体にとってなぜ重要?
銅は、エネルギー産生や鉄の代謝、赤血球・白血球の生成、結合組織の形成、神経の伝達などに関わる大切なミネラルです。さらに、細胞を酸化ストレスから守る抗酸化酵素(SOD)の材料にもなっています。
🔹 銅の主な働き
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エネルギーをつくる酵素のサポート
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赤血球や白血球の生成
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結合組織や骨の形成
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神経伝達の維持
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活性酸素(フリーラジカル)からの細胞保護
2. 1日に必要な銅の量は?
日本の「食事摂取基準(2025年版)」では、成人の推奨量は以下のとおりです。
年齢層 | 推奨量(mg/日) |
---|---|
幼児(1〜6歳) | 0.4〜0.5 |
小児(7〜14歳) | 0.6〜0.8 |
成人男性 | 0.9 |
成人女性 | 0.7 |
3. 銅を含む主な食品は?
銅は普段の食事から自然に摂取できます。特に多く含まれるのは以下のような食品です。
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🌾 全粒穀物(玄米、オートミールなど)
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🥜 ナッツ類(カシューナッツ、アーモンドなど)
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🥬 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)
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🍫 ココアやダークチョコレート
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☕ コーヒー・紅茶
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🫗 地域によっては水道水にも含まれることがあります
通常のバランスのとれた食事で、必要量はほぼまかなえます。
4. 銅が不足するとどうなる?
銅が不足すると、以下のような不調が出ることがあります。
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貧血や免疫力の低下(赤血球・白血球の減少)
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骨のもろさ(骨密度の低下)
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神経の異常(しびれ、筋力低下、感覚障害など)
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心機能の低下(まれに心不全)
ただし、これらはビタミンB12不足など他の原因でも起こるため、気になる症状があれば医師に相談し、血液検査で確認するのが確実です。
5. 摂りすぎるとどうなる?
銅は過剰に摂取してもすぐに症状が出るわけではありませんが、4.0mg以上の摂取が続くと、以下のような不調が現れる可能性があります。
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胃痛や吐き気、下痢などの消化器症状
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銅が肝臓や脳に蓄積されると、震えや筋肉のこわばり、発話障害などの神経症状が現れることもあります(かなりまれ)
また、傷んだ銅製の調理器具や、酸性の食品を長時間入れておいた容器なども注意が必要です。
6. サプリメントは必要?
特別な理由がなければ、基本的にサプリメントは必要ありません。
ただし、以下のようなケースでは医師と相談のうえ、補うことが検討されます。
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消化器の疾患(クローン病、セリアック病など)
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胃の手術後(例:胃バイパス)
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まれな遺伝性の銅吸収障害
銅は過剰摂取に注意が必要なミネラルなので、自己判断でのサプリ摂取は避け、必ず専門家に相談しましょう。
ひと目でわかるポイント
- ✅銅は、赤血球の生成や神経機能、抗酸化など、体内のさまざまな働きに関わる重要なミネラルです。
- ✅通常の食事で必要量は十分に摂れるため、特別な理由がなければサプリは不要です。
- ✅過剰摂取には注意が必要。気になる症状がある場合は、まず医師に相談しましょう。
Peter Leiner: Zu viel Zink – Wer denkt da an Kupfermangel als Folge? Ärztezeitung (2015)
https://www.aerztezeitung.de/Medizin/Wer-denkt-da-an-Kupfermangel-als-Folge-251672.html
Institute of Medicine (US) Panel on Micronutrients: Dietary Reference Intakes for Vitamin A, Vitamin K, Arsenic, Boron, Chromium, Copper, Iodine, Iron, Manganese, Molybdenum, Nickel, Silicon, Vanadium, and Zinc (2001) – Copper.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK222312/#ddd00329
J. Gale: The physiological and pathophysiological roles of copper in the nervous system. European Journal of Neurosciences (2024)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ejn.16370
L.M. Klevay: The contemporaneous epidemic of chronic, copper deficiency. Journal of Nutritional Science (2022)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9554529/
Bundesinstitut für Risikobewertung: Aufnahme von Kupfer: In Spuren lebensnotwendig, in größeren Mengen riskant (2023)
https://www.bfr.bund.de/cm/343/aufnahme-von-kupfer-in-spuren-lebensnotwendig-in-groesseren-mengen-riskant.pdf
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https://www.dge.de/wissenschaft/referenzwerte/kupfer-mangan-chrom-molybdaen/
Orpha-Net: Menkes-Syndrom
https://www.orpha.net/de/disease/detail/565
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html